前章において、サウル王のダビデ殺害の意志が明確となったことで、ここからダビデの逃避行が始まります。多勢に無勢、イスラエルの精鋭部隊に追われる身となりました。
そこでダビデは、ガデの王アキシュのもとに身を隠します。このガデとはペリシテの地ですからイスラエルの敵になります。さすがにサウル王の追手も敵の地には入ってこれませんから、ダビデの生き延びるための策です。
しかし、なんとペリシテ人の中にダビデの顔を覚えている者がいて、身分がばれそうになるわけです。その時ダビデは、気が狂ったふりをして難を逃れます。そしてダビデは、命からがらガデから逃れて荒野にあるアドラムという洞穴の中に身を隠すのです
(1サムエル22:1,2)。
その時の事をダビデは詩にしました。それが詩篇34篇、56篇に収められています。珠玉のことばが語られていますが、その中から一つだけ、
「心に恐れを覚える日、私はあなたを信頼します。」(56:3)
私も心に「恐れ」を持つことがあります。以前でしたら、その「恐れ」を持っている自分に悩み、その自分を責めます。主に信頼していたら恐れなどなくなるはずだ、と心から恐れを取り除こうと意識しました。
しかし御言葉は、逆のことを言います。主に信頼したら恐れがなくなるのではなく、恐れを覚える日に、主に信頼するのだと。
前者の考え方は、律法主義のリズムです。そして後者は、恵みのリズムです。
真っ暗な洞穴の中で、「私と共に主をほめよ。一つになった御名をあがめよう。」(34:3)と、共にいた者たちを主への賛美に招きます。そして「主を仰ぎ見て 光を得よ」(34:5 口語訳)と、神の栄光の臨在へと招くのです。
恐れがなくなったのではなく、恐れがあるからこそ主に信頼したのです。その結果、その真っ暗な洞穴は、賛美と栄光の臨在が満ち溢れたのです、
恐れのあるままで、不安なままで、弱さを抱えたままで、そのままで主のもとに行くのです。その時、主が私たちに出会ってくださるのです。
天の父なる神さま
真っ暗な洞穴の中で、そこには、恐れ、不安、恥が一杯ありましたが、あなたは、そこを賛美と栄光の臨在で満たしてくださいました。
今も、私たちの人生の暗闇を、あなたは光に変えてくださいます。恐れのある日に、主に信頼する者たちでありますように。主を仰ぎ見る力を与えてください。
主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン
文:関真士
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