『諸々の規定』
引き続き、神の民として聖別されたイスラエルが、その聖さを守るための律法が与えられています。それらは祭司である彼らが守るべき、儀式的聖さでした。これまでも動物や食物について、何が聖くて何が汚れているかについて彼らは学んで来ましたが、主はここで更なる聖さと汚れについて教えようとしています。
まず主の集会から排除しなければならない者たちについての規定です。それらは去勢された男子、不倫の子、アンモン人とモアブ人、エドム人とエジプト人でした。
去勢された男子とは宦官のことですが、彼らは神に創造された「かたち」が不完全であるため、聖さも不完全であるとされていました。しかし新約時代に入るとエチオピア人の宦官が救いに与っています(使徒8:27‐39)。これは主イエスによって律法が完結したことによる恵みです。
次に不倫の子とは、姦淫によって生まれた子のことだと言います。それは霊的な意味で「神が知らない子」、またへブル書に出て来る「神の訓練を受けていない私生児」のことを指すと言います(へブル12:8)。
またアンモン人とモアブ人については主への反逆の歴史のゆえに、彼らは永遠に主の集会に参加することができません。ただしエドム人とエジプト人については彼らの三代目からは主の集会に参加することができます。その理由は、エドム人はヤコブの兄弟、エジプト人はイスラエルが寄留させてもらっていたからです。
ここに書かれてある主の集会とは、主のための集会であり、民のための集会ではありません。つまり、神に招待された者だけがそこに集うことが出来るのです。教会の礼拝や、その他、主が臨在される場所はどこであれ、同じことが言えるのだろうと思います。自分の意思で集まったようであって、実は主の導きによるものだと知るなら、礼拝にしろ、学び会や奉仕など、参加するかしないか、というよりは主の招きに応じるか応じないかの選択なのだということを学びます。
この後もさらに、約束の地で神の民同士が助け合って生きていくための規定が宣べられています。たとえば、逃れて来た奴隷を主人のもとに引き渡すのではなく、もてなすようにという教えです。この奴隷とは異邦人ではなく同胞の奴隷であろうと思われます。逃れて来た彼らを追い返すのではなく、もてなすという精神は、現在、教会が引き継いでいると思いました。この世の問題や苦難から逃れて来た人たちを、温かく迎えてもてなすことはモーセの律法にある精神だったのです。
この他にも神殿娼婦、神殿男娼の禁止、利息の徴収の仕方などについても教えていますが、興味深いのは、隣人の畑の作物についてです。食べてもいいが、持って帰ったり、その畑地を耕してはいけないという規定です。畑地を自分のもののように耕すことが禁じられるのは分かりますが、作物を食べてもいいが、持って帰ってはいけないという規定は、日本では考えられないことではないでしょうか。知り合いに分けるならともかく、全く知らない他人に、しかも満ち足りるまで食べてもいいとなったなら、今の時代、畑地はホームレスで満ちると思われます。しかしこの規定は文字通りのものではなく、他者と豊かさを分け合うことを教えているそうです。なぜならそれら豊かに実った作物は、主の恵みだからです。
最後に誓願についての教えですが、これは偽りの誓いをしない、誓ったならそれを実行せよ、ということだそうです。しかしこの規定は後に主イエスによって、誓うなと教えられています(マタイ5:33‐37)。主イエスの時代、パリサイ派の人々はあらゆる物に対して誓いを立てていたようです。そこで主は、そのように軽はずみに誓うことを戒め、「はい」は「はい」、「いいえ」は「いいえ」と言いなさい、と教えられました。出来もしないことをむやみに誓うのではなく、約束したことは守る、出来ないことは出来ないと、正直であることをこの誓願の規定は教えているのです。
細かな規定がたくさん与えられましたが、それは彼らが共に助け合って生きていくために必要な戒めでした。しかしそれを守っても、罪を完全に聖めることは出来ませんでした。ではモーセの律法は無意味だったのかというと、そうではないのです。モーセの律法にある精神は今も、新約聖書を通して現代に生きる信者の生活の指針となっています。そして恵みの時代に生きる信者に求めらているのは「からし種ほどの信仰」だけです。この驚愕すべき福音に与ったことを心より感謝したいと思います。
祈り:愛する天のお父さま。モーセの律法にある精神を学ぶたびに、みことばの深さを感じます。神が定めた規定に沿って生きることは、何よりも幸せで平安です。どうかこれからもずっとみことばを学んでいくことができますように。主のみこころに沿う者とされますよう、導いてください。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン
文:アイゾン直子
参照:ハーベストタイム「申命記」、e-Sword「KingComment」
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