伝道者の書 1章
今日から読み始める伝道者の書は、箴言と同じく、ソロモンによって書かれたと推測されているようだが、はじまりの言葉が、心悲しく切ない。
「空の空。伝道者は言う。空の空。すべては空。日の下でどんなに労苦しても、それが人に何の益になるだろうか。」
神様から与えられた知恵を働かせて功を積み、イスラエルの繁栄を築き、思慮に富んだ数々の格言を残したソロモンは、知恵ある賢者であったがゆえに深く悩み、多くの痛みを抱えていたのかもしれない。
「実に、知恵が多くなれば悩みも多くなり、知識が増す者には苛立ちも増す。」(18節)
ソロモンに限らず、文豪ドストエフスキーやシェイクスピア、そして数多くの哲学者たちが著した本を読むと、人間の本質、悩みや罪は昔も今も変わらないことを知ることができるし、彼らのメッセージには共通するものがある。
人生いろいろあるけれど、最後には、すべてを神の摂理にゆだねる心境に到達せざるをえないのだと彼らは言う。ソロモンだって、結局は神を畏れて神に従うことが人間にとってすべてだと最後の12章で言い切っている。
私たちが生きる世界では、強いものが弱いものを虐げる。いろんなものをなぎ倒しながらずんずんと進んでいくものと、なぎ倒されて踏みつけられる側のものがいる。今ウクライナで起こっている戦争も、77年前に日本に投下された原爆も、犠牲になるのは国のトップや政治家ではなく普通に暮らしている人々だ。戦争は無くならない。
「昔あったものは、これからもあり、かつて起こったことは、これからも起こる。日の下には新しいものは一つもない。」(9節)
自然災害だって同じだ。大地震やハリケーンが繰り返しやってきて、すべてを一瞬にして破壊してしまう。
「私は、日の下で行われるすべてのわざを見たが、見よ、すべては空しく、風を追うようなものだ。」(14節)
私たちが暮らしている”日の下”の世界には、何一つとして確かなものなんてない。どれほど科学が進歩しても、学問を追求しても、努力していろんなものを手に入れても、人生経験を積んでも、人の心は完全には満たされない。むなしい。
だからこそ人間は、物語や芸術を生み出さずにはいられないのかもしれない。聖書だって、人間が創り出した一つの文学にすぎないと考える人もいる。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。誰にもわからない。
確かに人生というのは、大体においてやるせなく、くたびれるものだ。けれども、思い煩って疲れきることによって初めて得ることのできる喜びもある。その真実に気づかせてくださったのは神様なのだと私は信じている。
愛する天のお父様。あなたは、私が悲しんだり苦しんだりする時、やさしく包みこんで心の波立ちを鎮めてくださいます。感謝します。今、辛い思いをしている人や不安な時を過ごしている人を支えて守ってください。主イエスキリストの御名によってお祈りします。アーメン
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